2012.07.29「緑の党」キックオフ!イベント レポート

2012年7月28日(土)に日本版「緑の党」が結成されたことを受けて、翌29日(日)に結成大会(キックオフイベント)が開催されました。世界各地の「緑の党」(Global Greens)から派遣されたゲストや全国の賛同者、日本各地の地方議員らが一堂に会し、記念すべきスタートを祝いました。会場となった星稜会館は二階席までほぼ満席で立ち見も出るほどの盛況ぶりで、ダークスーツばかりで単調な印象の強い従来の政党集会とは異なり、Tシャツや浴衣など、色とりどりの服装の個性的な人々で埋め尽くされていました。参加者の裾野の広さは最近のデモと同様で、子どもから高齢者まで幅広い年齢層、また若者や女性の参加が非常に多いことも印象的です。

大会ではまず「緑の党」結成の報告と名称発表がおこなわれ、続いて映画『第4の革命』監督のカール-A.フェヒナー氏のスピーチ、ドイツとオーストラリアの緑の党党首より届けられたビデオメッセージが披露されました。

フェヒナー監督のスピーチ

次に海外ゲストのあいさつです。今回のイベントのために、世界各地から駆けつけたゲストは5名。まずドイツ緑の党から参加したベアヘル・ハーン氏(会派副代表)が、原発関連産業から自然エネルギー産業への転換で40万人もの雇用が生じたという自国の成果を強調し、昨年の東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生した直後、世界に先んじて脱原発の路線を決定したドイツの経験を紹介しました。ハーン氏は「既存政党のような職業政治家による集団だけではなく、芸術家や科学者、知識人や幅広い層の市民と連携しながら、大きな理念を着実に実現していくことが必要」と述べ、脱原発に向かう日本の緑の党を激励しました。

オーストラリア緑の党のスコット・ラドラム氏は、先住民の居住地でおこなわれてきたウラン採掘に長年反対してきた経験から、日本の原子力エネルギー政策とオーストラリアのウラン燃料採掘は共有されるべき問題であるという主張を展開、「福島原発の核燃料はオーストラリアで採掘されたもの。お詫びしたい。日本の先進技術が自然エネルギー開発に生かされることを、世界中が期待している」と述べました。

台湾南東の蘭嶼(らんしょ)に住むタオ族で、放射性廃棄物貯蔵施設の反対を訴え続けてきた台湾緑の党のシナン・マヴィヴォ氏、元韓国環境運動連盟で気候変動と軍縮を担当していた環境活動家、韓国グワチェン市・市議会議長のソ・ヒョンウォン氏も駆けつけ、それぞれ日本の緑の党とアジア・世界各地の活動との連携を訴えました。インドの緑の党創設メンバーであるスレッシュ・ナウタヤル氏も、自身が運営委員を務めるアジア太平洋グリーンズネットワーク(APGN)の活動を紹介し、日本での活動への支持を表明しました。

日本国内からは、ピースボート共同代表の吉岡達也氏、元国立市長の上原公子氏、俳優の山本太郎氏、グリーンアクティブ代表の中沢新一、映画監督の鎌仲ひとみ氏が祝辞を述べました。山本太郎氏は「緑を主張するグループがたくさん増えてきた。緑の党だけでなく互いに連携して、一つの大きな力になれないか?」とスピーチ、来る国政選挙での候補擁立など、具体的な目標にまで話が及びました。

中沢新一はグリーンアクティブというネットワークを「緑の意識をつないでいく糊のようなもの」「横のつながりの弱いそれぞれの組織や運動をつないでいくもの」と説明。こうした姿勢から「緑の党」の結成を「多くの人が待ち望んでいたこと」「日本人が大きな目標に向かっていかなければいかないとき、ひとつの灯台になる力を秘めている」と期待を語りました。

さらに、緑の運動がなぜいま立ち上がらなければならないのかという問題について、つぎのように説明しました。

これまでは国の政府や大企業、官僚機構がおこなっている政策にたいする批判勢力は、たいがい《赤い運動》と呼ばれてきました。この運動は、それまでの第一次産業=農林水産業中心の世界が、産業革命によって製造業=工業である第二次産業中心の世界に変化していった時代に生まれたものです。つまりそれは、大量に発生した第二次産業の労働者が第一次産業の担い手を圧倒し、解体し、のみつくしていくという時代に誕生した。ところがいまや、歴史に現れた《赤い意識》は限界に達し、内部から変色を起こして、《緑の意識》に変わっていこうとしています。 このことの背景には、産業システムがグローバル化し、今度は第三次産業が第二次産業を包み込むようになってしまったこと、つまり情報や金融、流通のネットワークが世界中をひとつの市場に変え、第二次産業のものづくりの世界に深い影響を与えるようになってしまった、という現実があります。そして、21世紀のいま、肥大した第三次産業は、地球環境に大きな危機を及ぼしはじめています。国家の枠組みすら超えたグローバル企業の活動によって、金融・情報・流通の異常発達が推進されました。それは私たちの地域社会と日々の営みを破壊し、それらが環境の破壊という大きな問題を生じさせている。今日のエネルギー政策も、まさにそれに関わっています。《緑の運動》の興隆は、地球上の産業システムが変化しているなかで、まさにその必然的な展開として起こっていることです。 私たち日本人はこのことを、去年の3.11 に生じた震災と原子力発電所の事故を通じて痛いほど知りました。そして自分たちにとって、一体何が本質的な危機をもたらしているのかということを、深いレベルで認識するようになりました。日本人がこの一年間体験してきたことというのは、おそらく人類にとっても大変希有なことです。そしてこの希有な体験をもとに、深い認識と思想をもって自分たちの世界を変えていく運動をはじめていかなければなりません。それが緑の党結成の、大きな一歩のもつ意味だと思い心から歓迎します。おめでとうございます。

鎌仲監督は山口県知事選で善戦した飯田哲也氏の例を挙げながら「選択肢を作ることや、日本の政治に多様性をもたらすこと」が重要であると述べました。また、「環境と経済は決して矛盾しない」「毛細血管のような各地域の現場といかに繋がって日本を変えていくか」「互いに足を引っ張り合うのではなく、大きな目標のために多様性をもったままお互いが支え合い助け合っていくことが必要」と訴えました。

この他、さまざまなゲストから寄せられた応援ビデオメッセージも上映され、イベントの後半では、アートパフォーマンス(Yae+真砂秀明)や会津に伝わる「かんしょ踊り」も披露されました。また福島からのビデオレターを紹介する共に、「希望の福島へ4つの緊急提言」をおこなうなど、東北復興に向けたメッセージを発信、最後に総選挙の方針や候補者擁立に向けた呼びかけがおこなわれました。

《緑の意識》を政治的な力に変えていく運動は、今回の「緑の党」の結成によって大きな一歩を刻みました。グローバルグリーンズやアジア太平洋グリーンズネットワークとの連携によって国際的な紐帯も深まり、この運動への期待は国内的にもますます高まっていくでしょう。グリーンアクティブでは、こうのようにさまざまなところで発生している《緑の意識》を持つ21世紀的な運動との連携を深め、再生可能エネルギー利用の新たな可能性、第1次産業にもとづく地域や産業社会の今後のあり方、ユーモアや幸福を失わない生き方、動植物との共生を実現する仕組みづくりなどを模索していけたら、と考えています。